#99 生前の不動産の分割
相続財産に不動産が含まれていると、不動産を引き継ぐ相続人を決めなければなりません
相続人が決まらない場合、不動産は全ての相続人の共有財産となります。この場合、他の共有者の同意なしに不動産の売却などの処分などができなくなるほか、共有者が死亡すれば権利がさらに複雑化してトラブルが発生しやすくなります
今回は不動産の生前対策としての『土地の分割』について簡単に解説したいと思います
たとえば、父親が亡くなり、土地を3人の子どもが相続することになったとします
「とりあえず、誰が相続するかを決められないから公平に共有にしておこう」ということで、一旦3人の共有財産として相続しました
ところが、話し合いなどをする前に長男が死亡してしまい、土地は、2人の兄弟と残された長男の妻と2人の子どもと、弟2人との合計5人の共有財産になることに……
もしもその後に2人の兄弟も死亡してしまったら、それぞれの子どもたちが相続人となり、土地の共同所有者数はますます膨れ上がってしまいます
相続の現場として、相続が繰り返された結果、最終的に一つの土地に何十人もの相続人で共有になることも、実例としてみかけます
共同所有者が増えたとしても、関係が良好であればもちろん話がまとまる可能性も高いのですが、親族仲が悪かったり疎遠だったりすると、話し合いがまとまらないこともあります。また、何十人もいる相続人の中に認知症の方や、行方知らずの方がいれば、もはや話し合いすら行うことができません。
がまとまらずに放置しているうちに、新たな相続が発生し、事態がさらに深刻化する恐れもあります。
もしかすると、少数でお互いの人間関係が良好で話し合いのつく、当初の相続の時点で、この土地を将来的にどうするべきかをしっかりと話しあい、方向性を決めておくべきだったといえるのかもしれません
相続人となる兄弟の仲が悪いなど、トラブル種がすでにある場合には、不動産の所有者自身が生きているうちに、所有権の移転先について何らかの対策を取っておく必要があります。何の対策もせずに亡くなると、死後に不動産を巡るトラブルが起こる可能性が高いからです。
関係性の悪い相続人同士で話し合い、解決に漕ぎつけることは、相続人にとっても負担の大きい作業です
具体的な解決策として、所有者が生前に不動産を分割して、それぞれの相続人に生前贈与したり、遺言書で承継者を決めてあげる方法も有効です。分割すると土地自体は狭くはなりますが、単独で所有できるため、土地を売ってお金に換えることも、土地に家を建てて住むことも、人に賃貸することも個々の判断で可能になります
自分の死後に大切な家族が争うことになるのは不本意なことでしょう。円満な相続となるよう、生前
にできることをやっておくのがベストです
この記事を担当した行政書士
行政書士法人いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
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公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
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相続・会計
- 経歴
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行政書士法人いわみ会計事務所。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。