#98 できるだけ多くの財産を現妻とその子に残すには
厚生労働省による『令和元年(2019)人口動態統計の年間推計』によれば、2019年に離婚した夫婦は21万
組です
相続においては、離婚した配偶者との親族関係は解消されても、子との親族関係は残りますので、元配偶者との子も相続人になります
遺言書の作成などをしないままに相続が発生した時、遺産分割は、再婚した配偶者とその子だけでなく、元配偶者との間の子で協議を行うことになります
実際の相続の現場としても、再婚後の親族にしてみれば、音信不通であったりやりとりなどをしたこともなく、場合によってはその存在すら知らなかった人と、財産の分け方について話し合いをすることになるため、複雑な心境になりますし、財産がらみのトラブルは得てして決着がつきにくいものです
離婚歴がある場合や婚外子やいる場合には、自分の死後に財産をめぐって揉めごとが起きないよう、十分な配慮と準備が必要でしょう
ご相談のなかに、離婚・再婚歴があり、それぞれに前妻との間にも現妻との間にも子どもがいる人のなかには、「今の妻や子どもにできるだけ多くの財産を残したい」という内容も多いです
自分が死んでしまった後、今の家族が生活費に困るような事態は避けたいものです
そこで今回は、どうすればより多くの財産を今の妻や子どもに残すことができるのか、考えてみたいと思います
まず、前提知識を確認します。まず、前妻には相続権はありません。前妻は離婚をすると相続権を失います。
親子関係は両親が離婚しても切れないため、前妻との間に生まれた子には相続権が残ります。前妻との子は、現妻との子と同じ相続権を持ち、遺留分を請求する権利もあります
そのため、遺言書に『今の妻と子どもに全ての財産を譲る』と記したとしても、前妻との間の子が遺留分侵害額請求権を行使した場合、これに応じなければなりません。したがって、今の家庭の親族にだけすべての財産を残す、ということはできません
しかし裏を返せば、この遺留分を侵害しなければ遺産の配分は自由にできるということです
前妻の子の遺留分を計算に入れたうえで、できるだけ再婚後の妻と子に必要な財産が残るような内容で遺言書を作成しておけば、相続時にトラブルになることも避けられるでしょう
あるいは、遺留分侵害額請求権を行使するかどうかは本人次第ですから、前妻との間に生まれた子が相続権を行使しないということに同意すれば今の家庭に全財産を遺すことができます
あらかじめ誠意を持って相続財産について話し合っておくという方法が、最も有効な相続対策なのかrもしれません。いずれにしても、生前にしっかりと対策をしておくことが肝要です
この記事を担当した行政書士
行政書士法人いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
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公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
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相続・会計
- 経歴
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行政書士法人いわみ会計事務所。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。