#90 株式の相続手続においての注意点
相続財産に株式が含まれているとき、相続手続はどのように進めていけばよいでしょうか?
遺産分割協議が調うまでは、株式は『準共有』という状態になり、株主としての権利行使に制限が生じます
場合によっては会社の経営に悪影響を与えるおそれもあります
今回は株式の相続について、遺産分割時の注意点とともに簡単にご説明したいと思います
相続が発生したとき、被相続人があらかじめエンディングノートなどで財産目録を作っておいてくれれば、相続財産をスムーズに把握することができるでしょう
しかし、相続財産が不明確なまま相続が発生することも少なくありません
このような場合には相続人が財産調査を行いますが、不動産や預貯金については、現物そのものや預金通帳などが存在することによって財産の存在を把握することがあります。
また有価証券でも、上場株式のように証券会社保管のものは、証券会社から送付される取引報告書などで把握することもあります。
しかし非上場株式のように現物もなく、また通帳や取引報告書などがないものについては、
被相続人がその株式を所有していたにも関わらず見落としたまま相続手続が進んでしまうこと、つまり相続手続の対象から株式が漏れてしまうことがあります
株式の相続手続をせずそのまま放置している場合、相続人全員で共同で所有している『準共有』という状態になります
準共有の株式の問題点としては、株主としての権利行使に制限が生じることがあげられます
準共有している株式の株主権を行使するには、原則として、準共有者である相続人のなかから代表者を1人決めて、株式発行会社に対してその代表者(権利行使者)の氏名などを通知する必要があります
このとき、準共有者同士で争いが起こってしまうと、代表者を決めるのが難しくなってしまいます
持株が多い場合、会社の意思決定に支障が出る恐れがありますし、事業活動が立ち行かなくなると株式価値も下がりかねません
準共有状態を解消するための遺産分割協議の手順と注意点
株式の準共有状態を解消するには、遺産分割協議で、だれがどれだけ株式を相続するかを決める必要があります。その手順はおおむね以下のとおりです
・株式の価格を算出する
・ 株式の分け方を決める(現物そのものを分けるのか、代償分割にするか、株式を売却して現金に換えて相続するかなど)
・ 相続する割合を決める
株式の価格について、上場株式であれば証券取引所の取引価格で評価できますので算出はとても簡単です。
しかし非上場株式の場合は会社の規模や株式の所有割合などによって計算方法が違いますから、トラブル回避のためにも専門家に依頼するなどして算出することが望ましいでしょう
被相続人が経営していた会社の場合、後継者問題で揉めてしまい、遺産分割協議がまとまらない事態も起こり得ます。その場合、協議を早くまとめるために専門家の力を借りることも検討したいところです。可能であれば、生前に対策を立てておくのがベストです
この記事を担当した行政書士
行政書士法人いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
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公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
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相続・会計
- 経歴
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行政書士法人いわみ会計事務所。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。