#87 相続不動産を売却する際に受けられる特例
被相続人が住んでいた家屋を売却するとき、その売却価格から、購入時の価格や仲介手数料などを差し引いた利益(譲渡所得)に対して、所得税と住民税が課税されます
今回は、被相続人の家屋を売却する際に知っておきたい控除と、相続時の特例について簡単にご説明します
■『空き家の3000万円特別控除』
相続した家屋を売却するときに知っておきたいのが『空き家の譲渡所得の3000万円特別控除』です
これは、相続により空き家になった自宅不動産を相続人が売却した場合、一定の適用要件を満たす場合には売却した際の譲渡所得から最高3000万円を控除することができる制度です
単純計算で最大で600万円近い譲渡税の節約につながるものですので、しっかりと押さえておきたい税制です
主な適用要件は以下の通りです
●相続開始の直前において被相続人が一人で居住していたものであること
●1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物であること
●相続時から売却時まで、事業・貸付・居住の用に供されていないこと
●相続により土地および家屋を取得すること
●売却代金が1億円未満であること
●家屋について一定の耐震基準を満たしていること
なお、相続を開始した日から3年が経過する年の12月31日、かつ特例の適用期間である2016年4月1日から2023年12月31日までに譲渡することも条件となります
条件は厳しいですが、控除される額は大きいのでしっかりと押さえておきましょう
■『小規模宅地等の特例』
被相続人の自宅を相続する際に知っておきたいのが『小規模宅地等の特例』です
これは、被相続人が自宅として使っていた土地や、事業用に使っていた土地、同族法人に貸し付けていた土地などについて、評価額を最大で80%減額できる制度です
このうち自宅として使っていた土地(居住用)については、330㎡(およそ100坪)を上限として80%が減額されます
相続税は財産の評価額に基づいて計算されるため、評価額が大きく減額できれば、当然結果として税額を大幅に軽減できます
ただし基本的に小規模宅地等の特例が使えるのは、被配偶者や同居している親族です
別居親族でも一定の要件を満たす場合には特例を受けることができますが、すでに持ち家があるなどの場合にはこの特例は使えません
相続する可能性のある不動産がある場合は、税務上の特例や控除の適用要件をあらかじめ確認しておくことが大切です
この記事を担当した行政書士
行政書士法人いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
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公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
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相続・会計
- 経歴
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行政書士法人いわみ会計事務所。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。