#85 相続税の申告漏れや誤りがある場合のペナルティ?
被相続人が死亡したあと、残された家族にとって相続税を期限内に申告するのは大きな負担です
無事に申告書を提出して納税したあとも、税務調査が入る可能性もありますから気が抜けません
そこで今回は、税務調査で申告漏れや誤りが指摘されたときに課されるペナルティについて、簡単に解説します
2019年12月に国税庁が公表した『平成30事務年度における相続税の調査等の状況』によれば、
2016年に発生した相続を中心に行った相続税の実地調査(税務調査)は12463件、
そのうち申告漏れなどを指摘された非違件数は10684件で、非違割合は85.7%に上ることがわかりました
近年は、課税対象となった被相続人の数が約10~11万人台の水準で推移しており、単純計算でも申告が必要な相続事案のうち約1割が実地調査に入られていることになります
また、実地調査に至らないまでも、ちょっと確認したいんですが、ということで問い合わせや内容の確認がなされることも多く、
その件数も含めると調査割合はもっと高くなります
調査の対象になりやすいものには次のようなものがあります
●名義預金・名義株
『名義預金』とは、配偶者、子や孫など、被相続人が生前に自身以外の名義で預貯金口座などを作り、そちらに資金移動をしている場合の当該預金などをいいます
形式的には他人名義なのですが、実質的・実体としては被相続人の管理・支配の影響下にある財産であり、
名義借財産、他人名義財産などともいわれます
●使途不明金
被相続人名義の口座から使途不明の多額のお金が引き出されていたり、被相続人以外の第三者が預金を引き出した形跡があったりすると、調査の対象になりやすいといわれます
税務調査の結果、非違が判明した場合、次のようなペナルティが課される可能性があります
①過少申告加算税
申告期限内に申告したものの、申告書に記載した金額が過少だった場合、
新たに納めることになった税金に対して5~15%の過少申告加算税が追加されます
ただし正当な理由があると認められる場合には適用されないこともあります
②無申告加算税
申告期限内に相続税を申告しなかった場合のペナルティで、
納付すべき税額に対して5~20%の無申告加算税が追加されます
こちらも正当な理由がある場合は不適用となります
注意点として、「遺産分割がまとまらなかった」というのは期限内申告を行わない正当な理由にはなりませんので注意しましょう
③重加算税
申告漏れ等について仮装・隠蔽による不正事実があるなど、悪質なケースだと判断されたときには
過少申告加算税や無申告加算税に代えて重加算税が課されます
税率は35~40%です
④延滞税
定められた期限までに納税しなかった場合、法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税がかかります
相続税申告は、相続人ご自身でする場合でも税理士に依頼する場合も、
多くの資料収集が必要になったり、複雑な不動産の評価作業などが必要になるため
数ケ月の時間を要するなども珍しいことではありません
のんびり構えていると、期限内に申告ができないこともよくあります
国税庁は実地調査のほかにも、電話や文書面接による申告の是正にも取り組んでいます
期限内に適正な申告ができるよう、前もって相続税についてシミュレーションしておくといざというときに慌てずに済むでしょう
この記事を担当した行政書士
行政書士法人いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
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公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
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相続・会計
- 経歴
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行政書士法人いわみ会計事務所。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。