#82 知っておきたい「遺留分侵害額請求」
父親が残した遺言書に「子に全財産を相続させる」と書かれていた場合、配偶者が財産を相続することはできないようにも思えます
しかし、子が合意すれば、遺言書通りに遺産分割する必要はありません
では、子が合意しないとき、配偶者は遺産を受け取ることはできないのでしょうか?
今回は法定相続人の『遺留分』について簡単に解説したいと思います
■法定相続人の相続権利を助ける相続財産の一定割合請求
民法では、法定相続人に一定割合の相続権を認めています
しかし冒頭のケースのように「子に全ての財産を」という遺言書が有効で、しかも遺産分割協議でほかの相続人との話し合いも困難な場合は、配偶者は全く財産を受け取れないことになってしまいます
このような状況を防ぐために、兄弟姉妹以外の法定相続人は『遺留分』として相続財産の一定割合を請求する『遺留分侵害額請求権』を行使できます
遺留分侵害額請求権として認められる割合は、法定相続割合を基に決まっています
遺留分の計算には2段階の割合があり、まずはどんなケースにも認められる『総体的遺留分』を計算し、その後、個別の相続人に認められる『個別的遺留分』を計算します。その総体的遺留分に各相続人の法定相続分をかけ算したものが、『遺留分侵害額請求権の範囲』となります
たとえば配偶者が2分の1の法定相続分を持っている場合には、総体的遺留分2分の1×配偶者の法定相続分2分の1=4分の1の遺留分が認められます
〈例:配偶者と子2名の場合〉
●法定相続割合 配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1
●遺留分侵害額請求権の範囲 配偶者が4分の1、子がそれぞれ8分の1
〈例:配偶者と被相続人の親2名の場合〉
●法定相続割合 配偶者が3分の2、親2名がそれぞれ6分の1
●遺留分侵害額請求権の範囲 配偶者が3分の1、親2名がそれぞれ12分の1
■民法改正により共有財産の相続が金銭債権での請求も可能に
従来の『遺留分減殺請求』には大きな問題が1つありました
相続財産が不動産など分けられないものだったとき、ほかの相続人と共有になってしまうことです
共有財産の活用や処分は、ほかの共有者の合意がなければむずかしいものです
そのため、請求権を行使して財産を相続したとしてもうまく活用できないという問題がありました
しかし2019年7月に施行された改正民法で、相続財産が預金債権や不動産などのどのような財産であっても、遺留分を「金銭債権」として請求できることになりました
この改正により、相続財産が不動産だけだったとしても、その不動産の評価額に応じた金銭を遺留分として請求できます
この記事を担当した行政書士
行政書士法人いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
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公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
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相続・会計
- 経歴
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行政書士法人いわみ会計事務所。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。