#79 相続不動産の共有名義について
相続人が単独ではなく複数人であることも多いと思います
相続した財産に不動産が含まれる場合、これを複数の相続人の共有名義にすることもできますが、相続後に様々な点でトラブルが発生するリスクがあるため注意が必要です
今回は、不動産を共有名義にすることについて簡単に解説します
相続財産のうち現金や預貯金などの金融商品は、相続人同士で比較的簡便に分割することができる財産です
一方で不動産は「不可分財産」とも呼ばれ、そう簡単に分割することはできません
理由は物それ自体に個性があり、代替性がなく、使い方などによって価値や価額が大きく変わりうるからです
そのため、「とりあえず」相続人で共有するとし、今後のことは「後日」考えよう、ということで共有登記をするケースもよく見かけます
不動産を共有名義にすると、後でトラブルがの種になることもあるため注意が必要です
たとえば、一つの相続不動産を兄と妹で2分の1ずつ共有したとします
兄はこのまま所有し続けたいと考え、妹は不動産を売却したいと考えている、とします
この場合、不動産の売却には共有者全員の同意が必要ですから、もし兄の考えが変わらないようであれば、この不動産を売却することはとても難しくなります
かといって、たとえばこの不動産が先祖代々の実家であり、兄一家が昔から居住を続けているものであれば
仮に妹の所有権が2分の1入っていたとしても、その権利所有を体感することはないでしょう
共有名義の不動産は、このように不動産を処分したり何らかの手を加えたりしたいときに、他の共有者の同意が必要になり煩雑です
「兄妹は仲が良く、円満相続だから大丈夫」とおっしゃる兄妹相続人の方もおられます
そのご兄妹の世代ではよくても、いつか必ず相続による世代交代が生じます
そのご兄妹の子や孫世代、さらにその先の世代にまで引き継がれていく可能性があることを考えると
事態は複雑化することが懸念されます
当事者間の顔が見えて、円満な話し合いができるタイミングで権利関係をシンプルにしておくことも検討しておくべきと考えます
また、共有の場合には、「登記簿上の所有者」「実際の使用者」「固定資産税を支払っている者」「維持費用を出している者」が一致しないことが多くあります
「私が固定資産税や修繕費用を払っているのに、それらを全く負担していない共有者と所有権が2分の1ずつなのは不公平だ!」などと、揉めてしまうこともあります
では、相続不動産の共有を原因とするトラブルが発生しないようにするためには、どのようにしたらよいでしょうか
相続が起きる前に現在の所有者がきちんと対策を検討しておくことがポイントです
不動産を「共有せざるを得ない状況」のままほったらかしにしておかないことです
①遺言書で不動産を引き継がせたい方を指定しておく
②生前贈与を使って相続の前に渡しておく
③現金預金など分割が容易な財産をしっかり準備し、遺産分割で揉めないようにする
④思い切って不動産を流動化し、金融商品へ財産の組み替えを行う
⑤分筆可能な土地があれば事前に分筆し、遺産分割をしやすい状態にしておく
⑥民事信託や配偶者居住権などの利用を検討する
この記事を担当した行政書士
行政書士法人いわみ会計事務所
代表
岩見 文吾
- 保有資格
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公認会計士・税理士・行政書士・FP
- 専門分野
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相続・会計
- 経歴
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行政書士法人いわみ会計事務所。大手監査法人での勤務を経て、2013年にいわみ会計事務所を開業。会計監査業務のみならず、相続に関しても年間200件近くの相談に対応するベテラン。その他、相続に関する多数のセミナー講師も引き受けている。